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大天魔にたぼらかされて、釈尊をなげすてて阿弥陀仏を本尊とす。あまりの物ぐるわしさに、十五日を奪い取って阿弥陀仏の日となす。八日をまぎらかして薬師仏の日と云々。あまりにおやをにくまんとて、八幡大菩薩をば阿弥陀仏の化身と云々。大菩薩をもてなすようなれども、八幡の御かたきなり。
知らずば、さてもあるべきに、日蓮、この二十八年が間、「今この三界は」の文を引いてこの迷いをしめせば、信ぜずは、さてこそあるべきに、いつ、きつ、ころしつ、ながしつ、おうゆえに、八幡大菩薩、宅をやいてこそ天へはのぼり給いぬらめ。日蓮がかんがえて候いし立正安国論これなり。
あわれ、他国よりせめ来って、たかのきじをとるように、ねこのねずみをかむようにせられん時、あまや女房どものあわて候わんずらん。日蓮が一るいを二十八年が間せめ候いしむくいに、あるいはいころし、切りころし、あるいはいけどり、あるいは他方へわたされ、宗盛がなわつきてさらされしように、すせんまんの人々のなわつきてせめられんふびんさよ。しかれども、日本国の一切衆生は皆五逆罪の者なれば、かくせめられんをば、天も悦び、仏もゆるし給わじ。あわれ、あわれ。はじみぬさきに、阿闍世王の提婆をいましめしように、真言師・念仏者・禅宗の者どもをいましめて、すこしつみをゆるせさせ給えかし。あらおかし、あらおかし。あらふびん、あらふびん。わわくのやつばらの智者げなれば、まこととてもてなして、事にあわんふびんさよ。恐々謹言。
十二月十八日 日蓮 花押
ちみょう房御返事
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(253)智妙房御返事 | 弘安3年(’80)12月18日 | 59歳 | 智妙房 |