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る所なし。他の苦はしばらくこれを置く。大火の一苦なり。この大地獄の大苦を仏委しく説き給うならば、我ら衆生、聞いて皆死すべし。故に、仏委しくは説き給うことなしと見えて候。
今、日本国の四十五億八万九千六百五十八人の人々は、皆この地獄へ堕ちさせ給うべし。されども、一人として堕つべしとはおぼさず。例せば、この弘安四年五月以前には、日本の上下万人、一人も蒙古の責めにあうべしともおぼさざりしを、日本国にただ日蓮一人ばかり、かかる事この国に出来すべしとしる。その時、「日本国の四十五億八万九千六百五十八人の一切衆生、一人もなく他国に責められさせ給いて、その大苦は、譬えばほうろくと申す釜に水を入れて、ざっこと申す小魚をあまた入れて、枯れたるしば木をたかんがごとくなるべし」と申せば、「あらおそろし、いまいまし。打ちはれ、所を追え、流せ、殺せ。信ぜん人々をば、田ぱたをとれ、財を奪え、所領をめせ」と申せしかども、この五月よりは大蒙古の責めに値ってあきれ迷うほどに、さもやと思う人々もあるやらん。にがにがしゅうしてせめたくはなけれども、有る事なれば、あたりたりあたりたり、日蓮が申せし事はあたりたり、ばけ物のもの申すようにこそ候めれ。去ぬる承久の合戦に、隠岐法皇の御前にして、京の二位殿なんどと申せし何もしらぬ女房等の集まって、王を勧め奉り戦を起こして、義時に責められあわて給いしがごとし。
今々御覧ぜよ。法華経誹謗の科といい、日蓮をいやしみし罰と申し、経と仏と僧との三宝誹謗の大科によって、現生にはこの国に修羅道を移し、後生には無間地獄へ行き給うべし。これまたひとえに、弘法・慈覚・智証等の三大師の法華経誹謗の科と、達磨・善導・律僧等の一乗誹謗の科と、これら
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(111)光日上人御返事 | 弘安4年(’81)8月8日 | 60歳 | 光日尼 |