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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

庫蔵の諸物も委付するところ無し』。その舎の側において樹林神有り。彼の婆羅門、子を求めんがための故に、即ち往って祈請す。年歳を逕歴すれども、徴無し。ただちに尼俱律陀大いに瞋忿を生じて樹神に語って曰わく『我汝に事えてより来、すでに年歳を逕れども、すべてために一つの福応を垂るるをも見ず。今なお七日至心に汝に事えん。もしまた験無くんば、必ず相焼剪せん』。明らかに樹神聞き已わってはなはだ愁怖を懐き、四天王に向かって、つぶさにこのことを陳ぶ。ここにおいて、四王往って帝釈に白す。帝釈、閻浮提の内を観察するに、福徳の人にして彼の子となるに堪うる無し。即ち梵王に詣で、広く上のことを宣ぶ。その時に梵王、天眼をもって観ずるに、梵天にして命終に臨当む有るを見る。しかして、これに告げて曰わく『汝もし神を降さば、よろしく当に彼の閻浮提界の婆羅門の家に生ずべし』。梵天対えて曰わく『婆羅門の法、悪邪見多し。我今その子となること能わざるなり』。梵王また言わく『彼の婆羅門は大威徳有り。閻浮提の人往って生ずるに堪うるなし。汝必ずかしこに生ぜば、吾相護って終に汝をして邪見に入らしめざるなり』。梵天曰わく『諾、敬んで聖教を承けん』。ここにおいて、帝釈即ち樹神に向かって、かくのごときことを説く。樹神、歓喜して、ついでその家に詣って婆羅門に語らく『汝、今また恨みを我に起こすことなかれ。却って後七日、当に卿が願を満たすべし』。七日に至り已わって、婦身むこと有るを覚え、十月を足満して一男児を生めり乃至今の迦葉等これなり」云々。
 「ただちに尼俱律陀大いに瞋忿を生ず」等云々。常のごときんば、氏神に向かって大瞋恚を生ぜん者は、今生には身をほろぼし、後生には悪道に堕つべし。しかりといえども、尼俱律陀長者、氏神に