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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

大乗経をや。いかにいわんや法華経をや。
 しかるに、月氏より漢土に経を渡せる訳人は一百八十七人なり。その中に羅什三蔵一人を除いて前後の一百八十六人は、純乳に水を加え、薬に毒を入れたる人々なり。この理を弁えざる一切の人師・末学等、たとい一切経を読誦し、十二分経を胸に浮かべたるようなりとも、生死を離るることかたし。また一分のしるしあるようなりとも、天地の知る程の祈りとは成るべからず。魔王・魔民等守護を加えて法に験の有るようなりとも、終にはその身も檀那も安穏なるべからず。譬えば、旧医の薬に毒を雑えてさしおけるを、旧医の弟子等、あるいは盗み取り、あるいは自然に取って人の病を治せんがごとし。いかでか安穏なるべき。
 当世日本国の真言等の七宗ならびに浄土・禅宗等の諸学者等、弘法・慈覚・智証等の法華経最第一の醍醐に法華第二・第三等の私の水を入れたるを知らず。仏説のごとくならば、いかでか一切俱失の大科を脱れん。大日経は法華経より劣ること七重なり。しかるを、弘法等、顚倒して大日経最第一と定めて日本国に弘通せるは、法華経一分の乳に大日経七分の水を入れたるなり。水にもあらず、乳にもあらず。大日経にもあらず、法華経にもあらず。しかも法華経に似て大日経に似たり。
 大覚世尊、このことを涅槃経に記して云わく「我が滅後において○正法将に滅尽せんと欲す。その時、多く悪を行ずる比丘有らん乃至牧牛女の、乳を売って多利を貪らんと欲せんがための故に、二分の水を加うるに乃至この乳は水多きがごとし○その時、この経、閻浮提において当に広く流布すべし。この時、当に諸の悪比丘有って、この経を抄略し、分かちて多分と作し、能く正法の色香美味