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切成仏す」文。女人・闡提・定性・二乗等の極悪人、霊山において当体蓮華を証得するを云うなり。
問う。末法今時、誰人か当体蓮華を証得せるや。
答う。当世の体を見るに、大阿鼻地獄の当体を証得する人これ多しといえども、仏の蓮華を証得せるの人これ無し。その故は、無得道の権教方便を信仰して法華の当体真実の蓮華を毀謗するが故なり。仏説いて云わく「もし人信ぜずして、この経を毀謗せば、則ち一切世間の仏種を断ぜん乃至その人は命終して、阿鼻獄に入らん」文。天台云わく「この経はあまねく六道の仏種を開く。もしこの経を謗ぜば、義、断に当たるなり」文。日蓮云わく、この経はこれ十界に通じて仏種なり。もしこの経を謗ぜば、義これ十界の仏種を断ずるに当たる。この人無間において決定して堕在す。何ぞ出ずる期を得んや。
しかるに、日蓮が一門は、正直に権教の邪法・邪師の邪義を捨てて、正直に正法・正師の正義を信ずるが故に、当体蓮華を証得して常寂光の当体の妙理を顕すことは、本門寿量の教主の金言を信じて南無妙法蓮華経と唱うるが故なり。
問う。南岳・天台・伝教等の大師、法華経に依って一乗円宗の教法を弘通し給うといえども、いまだ南無妙法蓮華経と唱えたまわざるは、いかん。もししからば、この大師等はいまだ当体蓮華を知らず、また証得したまわずと云うべきや。
答う。「南岳大師は観音の化身、天台大師は薬王の化身なり」等云々。もししからば、霊山において本門寿量の説を聞きし時はこれを証得すといえども、在生の時は妙法流布の時にあらず。故に、妙
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(038)当体義抄 | 文永10年(’73) | 52歳 | 最蓮房 |