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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

れ無し。善人は仏になると云って悪人の成仏を明かさず。男子は仏になると説いて女人は地獄の使いと定む。人天は仏になると云って畜類は仏になるといわず。しかるを、今経はこれらが皆仏になると説く。たのもしきかな。
 末代濁世に生を受くといえども、提婆がごとくに五逆をも造らず、三逆をも犯さず。しかるに、提婆なお天王如来の記別を得たり。いわんや、犯さざる我らが身をや。八歳の竜女、既に蛇身を改めずして南方に妙果を証す。いわんや、人界に生を受けたる女人をや。ただ得難きは人身、値い難きは正法なり。汝、早く邪を翻して正に付き、凡を転じて聖を証せんと思わば、念仏・真言・禅・律を捨てて、この一乗妙典を受持すべし。もししからば、妄染の塵穢を払って清浄の覚体を証せんこと疑いなかるべし。
 ここに愚人云わく、今、聖人の教誡を聴聞するに、日来の矇昧たちまちに開けぬ。天真発明とも云いつべし。理非顕然なれば、誰か信仰せざらんや。ただし、世上を見るに、上一人より下万民に至るまで、念仏・真言・禅・律を深く信受し御坐します。さる前には、国土に生を受けながら、いかでか王命を背かんや。その上、我が親といい、祖といい、かたがた念仏等の法理を信じて、他界の雲に交わり畢わんぬ。
 また日本には上下の人数いくばくか有る。しかりといえども、権教・権宗の者は多く、この法門を信ずる人はいまだその名をも聞かず。よって、善処・悪処をいわず、邪法・正法を簡ばず、内典五千・七千の多きも外典三千余巻の広きも、ただ主君の命に随い父母の義に叶うが肝心なり。されば、