SOKAnetトップ

『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

人の導師たり。徳行世に勝れ、名誉あまねく聞こえて、あるいは唐土より三鈷を八万余里の海上をなぐるに即ち日本に至り、あるいは心経の旨をつづるに蘇生の族途に彳む。しかれば、この人ただ人にあらず、大聖権化の垂迹なり。仰いで信を取らんにはしかじ。
 聖人云わく、予も始めはしかなり。ただし、仏道に入って理非を勘え見るに、仏法の邪正は必ず得通自在にはよらず。ここをもって、仏は「法に依って人に依らざれ」と定め給えり。前に示すがごとし。彼の阿伽陀仙は恒河を片耳にたたえて十二年、耆㝹仙は一日の中に大海をすいほす。張階は霧を吐き、欒巴は雲を吐く。しかれども、いまだ仏法の是非を知らず、因果の道理をも弁えず。異朝の法雲法師は講経勤修の砌に須臾に天華をふらせしかども、妙楽大師は、「感応かくのごときも、なお理に称わず」とて、いまだ仏法をばしらずと破し給う。
 夫れ、この法華経と申すは、已今当の三説を嫌って、已前の経をば「いまだ真実を顕さず」と打ち破り、肩を並ぶる経をば「今説」の文をもってせめ、已後の経をば「当説」の文をもって破る。実に三説第一の経なり。
 第四の巻に云わく「薬王よ。今汝に告ぐ。我が説くところの経典、しかもこの経の中において、法華は最も第一なり」文。この文の意は、霊山会上に薬王菩薩と申せし菩薩に仏告げて云わく、始め華厳より終わり涅槃経に至るまで、無量無辺の経、恒河沙等の数多し。その中には今の法華経最第一と説かれたり。しかるを、弘法大師は一の字を三と読まれたり。同巻に云わく「我は仏道のために、無量の土において、始めより今に至るまで、広く諸経を説く。しかもその中において、この経は第一な