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なるにはにたれども、女人不成仏・不往生の経によれる故に、いたずらに他の財を数えたる女人なり。これひとえに悪知識にたぼらかされたるなり。されば、日本国の一切の女人の御かたきは、虎狼よりも、山賊・海賊よりも、父母の敵・とわり等よりも、法華経をばおしえずして念仏等をおしうるこそ、一切の女人の御かたきなれ。
南無妙法蓮華経と一日に六万・十万・千万等も唱えて後に、暇あらば時々弥陀等の諸仏の名号をも口ずさみなるように申し給わんこそ法華経を信ずる女人にてはあるべきに、当世の女人は、一期の間弥陀の名号をばしきりにとなえ、念仏の仏事をばひまなくおこない、法華経をばつやつや唱えず、供養せず。あるいはわずかに法華経を持経者によますれども、念仏者をば父母・兄弟なんどのようにおもいなし、持経者をば所従・眷属よりもかろくおもえり。かくして、しかも法華経を信ずる由をなのるなり。そもそも浄徳夫人は、二人の太子の出家を許して法華経をひろめさせ、竜女は、「我は大乗の教えを闡いて、苦の衆生を度脱せん」とこそ誓いしが、全く他経ばかりを行じてこの経を行ぜじとは誓わず。今の女人はひとえに他経を行じて法華経を行ずる方をしらず。とくとく心をひるがえすべし、心をひるがえすべし。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
文永三年丙寅正月六日 日蓮 花押
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(033)法華経題目抄(妙の三義の事) | 文永3年(’66)1月6日 | 45歳 |