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この中の諸人もまた金剛のごとし」文。
疑って云わく、今この国土に種々の災難起こることを見聞す。いわゆる、建長八年八月より正元二年二月に至るまで、大地震・非時の大風・大飢饉・大疫病等、種々の災難連々として今に絶えず。大体国土の人数尽くべきに似たり。これによって種々の祈請を致す人これ多しといえども、その験無きか。正直捨方便・多宝証明・諸仏出舌の法華経の文の「百由旬の内に」、双林最後の遺言の涅槃経の「その地は金剛なり」の文、七難不起の仁王経の「千里の内に」の文、皆、虚妄に似たり。いかん。
答えて曰わく、今愚案をもってこれを勘うるに、上に挙ぐるところの諸大乗経、国土に在り。しかも祈請を成ぜずして災難起こることは、少しその故有るか。
いわゆる、金光明経に云わく「その国土において、この経有りといえども、いまだかつて流布せしめず、捨離の心を生じて聴聞せんことを楽わず○我ら四王○みな捨て去らん○その国に当に種々の災禍有るべし」。大集経に云わく「もし国王有って、我が法の滅せんを見て、捨てて擁護せずんば○その国の内に三種の不祥を出ださん」。仁王経に云わく「仏戒に依らず。これを破仏・破国の因縁となす○もし一切の聖人去らん時は、七難必ず起こらん」已上。
これらの文をもってこれを勘うるに、法華経等の諸大乗経、国中に在りといえども、一切の四衆、捨離の心を生じて、聴聞し供養する志を起こさざるが故に、国中の守護の善神、一切の聖人この国を捨てて去り、守護の善神・聖人等無きが故に出来するところの災難なり。
問うて曰わく、国中の諸人、諸大乗経において捨離の心を生じて供養する志を生ぜざることは、
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(025)災難対治抄 | 正元2年(’60)2月 | 39歳 |