140ページ
告げたまわく『誰か能くこの娑婆国土において、広く妙法華経を説かん』と」等云々。たとい教主一仏たりといえども、これを奨勧したまわば、薬王等の大菩薩、梵帝・日月・四天等は重んずべきのところに、多宝仏・十方の諸仏、客仏となってこれを諫暁したもう。諸の菩薩等は、この慇懃の付嘱を聞いて「我は身命を愛せず」の誓言を立つ。これらはひとえに仏意に叶わんがためなり。しかるに、須臾の間に仏語相違して、過八恒沙のこの土の弘経を制止したもう。進退これ谷まれり。凡智には及ばず。
天台智者大師、前三後三の六釈を作ってこれを会す。詮ずるところ、迹化・他方の大菩薩等に我が内証の寿量品をもって授与すべからず。末法の初めは謗法の国にして悪機なるが故にこれを止め、地涌千界の大菩薩を召して、寿量品の肝心たる妙法蓮華経の五字をもって閻浮の衆生に授与せしめたもうなり。また迹化の大衆は釈尊初発心の弟子にあらず等の故なり。天台大師云わく「これ我が弟子、応に我が法を弘むべし」。妙楽云わく「子、父の法を弘む。世界の益有り」。輔正記に云わく「法これ久成の法なるをもっての故に、久成の人に付す」等云々。
また弥勒菩薩疑請して云わく、経に云わく「我らは、また『仏の宜しきに随って説きたもうところ、仏の出だしたもうところの言はいまだかつて虚妄ならず。仏は、知ろしめすところをば、みな通達す』と信ずといえども、しかも諸の新発意の菩薩は、仏滅して後において、もしこの語を聞かば、あるいは信受せずして、法を破する罪業の因縁を起こさん。しかり、世尊よ。願わくは、ために解説して、我らが疑いを除きたまえ。および未来世の諸の善男子は、このことを聞き已わりなば、また疑いを生ぜじ」等云々。文の意は、寿量の法門は滅後のためにこれを請うなり。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
---|---|---|---|
(006)如来滅後五五百歳始観心本尊抄(観心本尊抄) | 文永10年(’73)4月25日 | 52歳 |