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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(408)

妙法尼御前御返事(臨終一大事の事)

 弘安元年(ʼ78)7月14日 57歳 妙法尼

 御消息に云わく「みょうほうれんげきょうを、よるひるとなえまいらせ、すでにちかくなりて、二声こうしょうにとなえ、乃至いきて候いし時よりも、なおいろもしろく、かたちもそんぜず」と云々。
 法華経に云わく「如是相乃至本末究竟等」云々。大論に云わく「臨終の時に色黒きは、地獄に堕つ」等云々。守護経に云わく「地獄に堕つるに十五の相、餓鬼に八種の相、畜生に五種の相」等云々。天台大師の摩訶止観に云わく「身の黒色は地獄の陰を譬う」等云々。
 夫れ以んみれば、日蓮幼少の時より仏法を学し候いしが、念願すらく「人の寿命は無常なり。出ずる気は入る気を待つことなし。風の前の露、なお譬えにあらず。かしこきも、はかなきも、老いたるも、若きも、定め無き習いなり。されば、まず臨終のことを習って後に他事を習うべし」と思って、一代聖教の論師・人師の書釈あらあらかんがえあつめて、これを明鏡として一切の諸人の死する時とならびに臨終の後とに引き向かえてみ候えば、すこしもくもりなし。この人は地獄に堕ちぬ、乃至人天とはみえて候を、世間の人々、あるいは師匠・父母等の臨終の相をかくして、西方浄土往生とのみ申し候。悲しいかな、師匠は悪道に堕ちて多くの苦しのびがたければ、弟子はとどまりいて師の臨