『日蓮大聖人御書全集　新版』全文検索

法を捨てしむるがための故に」〈論文〉。謗法の相貌は、この法を捨てしむるが故なり。選択集は人をして法華経を捨てしむる書にあらずや。閣・抛の二字は仏性論の「憎背」の二字にあらずや。
　また法華経誹謗の相貌は、四十余年の諸経のごとく小善の成仏をもって別時意趣と定むる等なり。故に、天台、釈して云わく「もし小善の成仏を信ぜずんば、則ち世間の仏種を断ずるなり」。妙楽重ねてこの義を宣べて云わく「この経はあまねく六道の仏種を開く。もしこの経を謗ぜば、義、断に当たるなり」。釈迦・多宝・十方の諸仏・天親・天台・妙楽の意のごとくんば、源空は謗法の者なり。詮ずるところ、選択集の意は、人をして法華・真言を捨てしめんと定めて書き了わんぬ。謗法の義、疑いなきものなり。

　大文の第三に、選択集の謗法の縁起を出ださば、
　問うて云わく、いずれの証拠をもって源空を謗法の者と称するや。
　答えて云わく、選択集の現文を見るに、一代聖教をもって二つに分かつ。一には聖道・難行・雑行、二には浄土・易行・正行なり。その中に、聖・難・雑というは、華厳・阿含・方等・般若・法華・涅槃・大日経等なり〈取意〉。浄・易・正というは、浄土三部経の称名念仏等なり〈取意〉。聖・難・雑の失を判ずるには、末代の凡夫これを行ぜば「百の時に希に一・二を得、千の時に希に三・五を得ん」、あるいは「千の中に一りも無し」、あるいは「群賊・悪衆・邪見・悪見・邪雑の人」等と定むるなり。浄・易・正の得を判ずるには、末代の凡夫これを行ぜば「十は即ち十生じ、百は即ち百生ぜん」等なり。謗法