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云わく「迦葉菩薩、仏に白して言さく『世尊よ、仏の所説のごとく、大涅槃の光、一切衆生の毛孔に入る』と」等云々。また云わく「迦葉菩薩、仏に白して言さく『世尊よ、いかんぞ、いまだ菩提心を発さざる者、菩提の因を得ん』と」等云々。仏この問いを答えて云わく「仏、迦葉に告げたまわく『もしこの大涅槃経を聞くことあって、我は菩提心を発すことを用いずと言って正法を誹謗せん。この人、即時に夜の夢の中において羅刹の像を見て心中に怖畏す。羅刹語って言わく、咄いかな、善男子よ。汝今もし菩提心を発さずんば、当に汝が命を断つべしと。この人惶怖し、寤め已わって、即ち菩提の心を発す○当に知るべし、この人はこれ大菩薩なり』と」等云々。いとうの大悪人ならざる者の正法を誹謗すれば、即時に夢みてひるがえる心生ず。
また云わく「枯木・石山」等。また云わく「燋れる種甘雨に遇うといえども」等。また「明珠淤泥」等。また云わく「人の手に創あるに、毒薬を捉るがごとし」等。また云わく「大雨、空に住せず」等云々。これらの多くの譬えあり。詮ずるところは、上品の一闡提人になりぬれば、順次生に必ず無間獄に堕つべきゆえに現罰なし。例せば、夏の桀・殷の紂の世には天変なし。重科有って必ず世ほろぶべきゆえか。
また守護神この国をすつるゆえに現罰なきか。謗法の世をば守護神すてて去り、諸天まぼるべからず。かるがゆえに、正法を行ずるものにしるしなし。還って大難に値うべし。金光明経に云わく「善業を修する者は日々に衰減す」等云々。悪国・悪時これなり。つぶさには立正安国論にかんがえたるがごとし。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(005)開目抄 | 文永9年(’72)2月 | 51歳 | 門下一同 |