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等云々。また云わく「秘密主よ。彼はかくのごとく無我を捨て、心主自在にして、自心の本不生を覚る」等云々。また云わく「いわゆる空性は根境を離れ、無相にして境界無く、諸の戯論に越えて虚空に等同なり乃至極無自性」等云々。また云わく「大日尊は、秘密主に告げて言わく『秘密主よ。いかんが菩提。謂わく、実のごとく自心を知る』と」等云々。
華厳経に云わく「一切世界の諸の群生、声聞道を求めんと欲すること有ること尠し。縁覚を求むる者は転たまた少なし。大乗を求むる者ははなはだ希有なり。大乗を求むることはなお易しとなし、能くこの法を信ずることははなはだ難しとなす。いわんや、能く受持し、正憶念し、説のごとく修行し、真実に解せんをや。もし三千大千界をもって頂戴すること一劫、身動ぜざらんも、彼の所作いまだ難しとなさず。この法を信ずるははなはだ難しとなす。大千塵数の衆生の類いに一劫諸の楽具を供養するも、彼の功徳いまだ勝れたりとなさず。この法を信ずるは殊に勝れたりとなす。もし掌をもって十仏刹を持ち、虚空の中において住すること一劫なるも、彼の所作いまだ難しとなさず。この法を信ずることははなはだ難しとなす。十仏刹塵の衆生の類いに一劫諸の楽具を供養せんも、彼の功徳いまだ勝れたりとなさず。この法を信ずることは殊に勝れたりとなす。十仏刹塵の諸の如来を一劫恭敬して供養せんに、もし能くこの品を受持せば、功徳は彼よりも最も勝れたりとなす」等云々。
涅槃経に云わく「この諸の大乗方等経典も、また無量の功徳を成就すといえども、この経に比せんと欲するに、喩えとなすことを得ず。百倍千倍百千万、乃至算数・譬喩も及ぶこと能わざるところなり。善男子よ。譬えば、牛より乳を出だし、乳より酪を出だし、酪より生蘇を出だし、生蘇より熟蘇
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(005)開目抄 | 文永9年(’72)2月 | 51歳 | 門下一同 |