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行敏御返事
文永8年(ʼ71)7月13日 50歳 行敏
〈行敏からの初度の難状〉
いまだ見参に入らずといえども、事の次いでをもって申し承るは、常の習いに候か。
そもそも、風聞のごとくんば、立つるところの義、もっとももって不審なり。法華の前に説ける一切の諸経は皆これ妄語にして出離の法にあらずと〈これ一〉。大小の戒律は世間を誑惑して悪道に堕とさしむるの法なりと〈これ二〉。念仏は無間地獄の業なりと〈これ三〉。禅宗は天魔の説、もし依って行ずる者は悪見を増長すと〈これ四〉。
事もし実ならば、仏法の怨敵なり。よって対面を遂げて悪見を破らんと欲す。はたまたその義無くんば、いかでか悪名を被らざらん。痛ましきかな。是非につけ、委しく示し給わるべきなり。恐々謹言。
七月八日 僧行敏 在判
日蓮阿闍梨御房
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(076)行敏御返事 | 文永8年(’71)7月13日 | 50歳 | 行敏 |