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の肝心真言に云わく「曩謨三曼陀没駄南〈帰命普仏陀〉、唵〈三身如来〉、阿阿暗悪〈開示悟入〉、薩縛勃陀〈一切仏〉、枳攘〈知〉、娑乞蒭毘耶〈見〉、誐々曩三娑縛〈如虚空性〉、羅乞叉儞〈離塵相なり〉、薩哩達磨〈正法なり〉、浮陀哩迦〈白蓮華〉、蘇駄覧〈経〉、惹〈入〉、吽〈遍〉、鑁〈作〉、発〈歓喜〉、縛曰羅〈堅固〉、羅乞叉𤚥〈擁護〉、吽〈空無相無願〉、娑婆訶〈決定成就〉」。この真言は南天竺の鉄塔の中の法華経の肝心の真言なり。この真言の中に「薩哩達磨」と申すは正法なり。薩と申すは正なり。正は妙なり、妙は正なり。正法華、妙法華これなり。また妙法蓮華経の上に南無の二字をおけり。南無妙法蓮華経これなり。
妙とは具足、六とは六度万行、諸の菩薩の六度万行を具足するようをきかんとおもう。具とは十界互具、足と申すは一界に十界あれば当位に余界あり、満足の義なり。この経一部八巻二十八品六万九千三百八十四字、一々に皆妙の一字を備えて三十二相八十種好の仏陀なり。十界に皆己界の仏界を顕す。妙楽云わく「なお仏果を具す。余果もまたしかり」等云々。
仏これを答えて云わく「衆生をして仏知見を開かしめんと欲す」等云々。衆生と申すは舎利弗、衆生と申すは一闡提、衆生と申すは九法界。衆生無辺誓願度、ここに満足す。「我は本誓願を立てて、一切の衆をして、我がごとく等しくして異なることなからしめんと欲しき。我が昔の願いしところのごときは、今、すでに満足しぬ」等云々。
諸大菩薩・諸天等、この法門をきいて領解して云わく「我らは昔より来、しばしば世尊の説を聞きたてまつるに、いまだかつてかくのごとき深妙の上法を聞かず」等云々。
伝教大師云わく「『我らは昔より来、しばしば世尊の説を聞きたてまつるに』とは、昔法華経の前
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(005)開目抄 | 文永9年(’72)2月 | 51歳 | 門下一同 |