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いずれぞや。
一義に云わく、仏の端座六年もて法華無益と云うか。
問う。禅法には仏説無益なり。
答う。一義に云わく、これ自義なるか、経文なるか。
一義に云わく、やがてこれが天魔の所為なり。
問う。経文には「この法は示すべからず」と、いかん。
答う。一義に云わく、この文は法華無益と云う文なるか。
一義に云わく、しかれば法華に依るか。
一義に云わく、文段をもって責むべきなり。
問う。竜女は坐禅の成仏なり。その故は、経文に「深く禅定に入って、諸法を了達す」と説き給えり。知んぬ、法華無益ということを。
答う。一義に云わく、この義は自義なるか、経文なるか。
一義に云わく、もし法華の成仏ならば、天魔は治定なるか。
一義に云わく、文殊海中の教化は「妙法を論説す」と宣べたり、いかん。
問う。「常に坐禅を好む」「深く禅定に入る」「常に坐禅を貴ぶ」とも説けり、いかん。
答う。一義に云わく、文段をもって責むべきなり。
一義に云わく、この文は法華無益と云う文なるか。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(058)早勝問答 | 文永8年(’71) | 50歳 |