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(057)
真言天台勝劣事
文永7年(ʼ70) 49歳
問う。いかなる経論に依って真言宗を立つるや。
答う。大日経・金剛頂経・蘇悉地経ならびに菩提心論、この三経一論に依って真言宗を立つるなり。
問う。大日経と法華経と、いずれか勝れたるや。
答う。法華経は、あるいは七重、あるいは八重の勝なり。大日経は七・八重の劣なり。
難じて云わく、驚いて云わく、古より今に至るまで、法華より真言劣るという義、すべてこれ無し。これによって、弘法大師は十住心を立てて「法華は真言より三重の劣」と釈し給えり。覚鑁は「法華は真言の履取りに及ばず」と釈せり。打ち任せては「密教勝れ、顕教劣るなり」と世挙ってこれを許す。七重の劣という義は、はなはだ珍しきものをや。
答う。真言は七重の劣ということ珍しき義なりと驚かるるは理なり。
所以は、法師品に云わく「已に説き、今説き、当に説くべし。しかもその中において、この法華経は最もこれ難信難解なり」云々。また云わく「諸経の中において最もその上に在り」云々。この文の心は、法華は一切経の中に勝れたり〈これ、その一〉。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(057)真言天台勝劣事 | 文永7年(’70) | 49歳 |