748ページ
(051)
念仏無間地獄抄
建長7年(ʼ55) 34歳
念仏は無間地獄の業因なり、法華経は成仏得道の直路なり。早く浄土宗を捨てて法華経を持ち、生死を離れて菩提を得べきこと。
法華経第二の譬喩品に云わく「もし人信ぜずして、この経を毀謗せば、則ち一切世間の仏種を断ぜん。その人は命終して、阿鼻獄に入らん。一劫を具足して、劫尽きなば、さらに生まれん。かくのごとく展転して、無数劫に至らん」云々。この文のごとくんば、方便の念仏を信じて真実の法華を信ぜざらん者は、無間地獄に堕つべきなり。
念仏者云わく、我らが機は法華経に及ばざるあいだ、信ぜざるばかりなり。毀謗することはなし。何の科にて地獄に堕つべきか。
法華宗云わく、信ぜざる条は承伏なるか。次に、「毀謗」と云うは、即ち不信なり。「信は道の源、功徳の母」と云えり。菩薩の五十二位には十信を本となし、十信の位には信心を始めとなし、諸の悪業・煩悩は不信を本となす云々。しかれば、譬喩品の十四誹謗も不信をもって体となせり。今の念仏門は、不信といい誹謗といい、いかでか「阿鼻獄に入らん」の句を遁れんや。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
---|---|---|---|
(051)念仏無間地獄抄 | 建長7年(’55) | 34歳 |