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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

は迦葉尊者の髪をそり、王城において雨を祈り給いしかば、観音、日輪の中より出でて水瓶をもって水を灌ぎ、北天竺の金粟王の塔の下にして仏法を祈請せしかば、文殊師利菩薩、大日経の胎蔵の曼荼羅を現して授け給う。その後、開元四年丙辰に漢土に渡る。玄宗皇帝これを尊ぶこと日月のごとし。また大旱魃あり。皇帝、勅宣を下す。三蔵、一鉢に水を入れ、しばらく加持し給いしに、水の中に指ばかりの物有り。変じて竜と成る。その色赤色なり。白気立ち昇り、鉢より竜出でて虚空に昇り、たちまちに雨を降らす。
 かくのごとくいみじき人なれども、一時に頓死してありき。蘇生して語って云わく「我死につる時、獄卒来って鉄の縄七筋付け、鉄の杖をもって散々にさいなみ、閻魔宮に到りにき。八万聖教一字一句も覚えず、ただ法華経の題名ばかり忘れざりき。題名を思いしに鉄の縄少しき許りぬ。息続いで高声に唱えて云わく『今この三界は、皆これ我が有なり。その中の衆生は、ことごとくこれ吾が子なり。しかるに今この処は、諸の患難多し。ただ我一人のみ、能く救護をなす』等云々。七つの鉄の縄切れ砕け、十方に散ず。閻魔、冠を傾けて南庭に下り向かい給いき。今度は命尽きずとて帰されたるなり」と語り給いき。
 今、日蓮、不審して云わく「善無畏三蔵は先生に十善の戒力あり。五百の仏陀に仕えたり。今生には、捨てがたき王位をつばきをすつるがごとくこれをすて、幼少十三にして御出家ならせ給いて、月支国をめぐりて諸宗を習い極め、天の感を蒙り、化導の心深くして、震旦国に渡って真言の大法を弘めたり。一印一真言を結び誦すれば、過去・現在の無量の罪滅しぬらん。何の科によって閻魔の責め