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夫れ、仏法をひろめんとおもわんものは、必ず五義を存して正法をひろむべし。五義とは、一には教、二には機、三には時、四には国、五には仏法流布の前後なり。
第一に教とは、如来一代五十年の説教は大小・権実・顕密の差別あり。
華厳宗には五教を立てて一代をおさめ、その中には華厳・法華を最勝とし、華厳・法華の中に華厳経をもって第一とす。南三北七ならびに華厳宗の祖師、日本国の東寺の弘法大師この義なり。
法相宗は三時に一代をおさめ、その中に深密・法華経を一代の聖教にすぐれたりとす。深密・法華の中に、法華経は了義経の中の不了義経、深密経は了義経の中の了義経なり。
三論宗にまた二蔵三時を立つ。三時の中の第三の中道教とは、般若・法華なり。般若・法華の中には般若最第一なり。
真言宗には日本国に二つの流れあり。東寺流は、弘法大師、十住心を立て、第八法華・第九華厳・第十真言。法華経は大日経に劣るのみならず、なお華厳経に下るなり。天台の真言は、慈覚大師等、大日経と法華経とは広・略の異、法華経は理秘密、大日経は事理俱密なり。
浄土宗には、聖道・浄土、難行・易行、雑行・正行を立てたり。浄土の三部経より外の法華経等の一切経は、難行・聖道・雑行なり。
禅宗には二つの流れあり。一流は、一切経・一切の宗の深義は禅宗なり。一流は、如来一代の聖教は皆言説、如来の口輪の方便なり。禅宗は如来の意密、言説におよばず教外の別伝なり。
俱舎宗・成実宗・律宗は小乗宗なり。天竺・震旦には小乗宗の者、大乗を破することこれ多し。日
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(029)顕謗法抄 | 弘長2年(’62) | 41歳 |