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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(028)

教機時国抄

 弘長2年(ʼ62)2月10日 41歳

    本朝沙門日蓮これを註す。
 一に教とは、釈迦如来の説くところの一切の経・律・論、五千四十八巻四百八十帙、天竺に流布すること一千年。仏の滅後一千一十五年に当たって、震旦国に仏経渡る。後漢の孝明皇帝の永平十年丁卯より唐の玄宗皇帝の開元十八年庚午に至る六百六十四歳の間に、一切経渡り畢わんぬ。
 この一切の経・律・論の中に、小乗・大乗、権経・実経、顕教・密教あり。これらを弁うべし。この名目は、論師・人師よりも出でず、仏説より起こる。十方世界の一切衆生、一人も無くこれを用いるべし。これを用いざる者は外道と知るべきなり。阿含経を小乗と説くことは、方等・般若・法華・涅槃等の諸大乗経より出でたり。法華経には「一向に小乗を説いて法華経を説かざれば、仏慳貪に堕すべし」と説きたもう。涅槃経には「一向に小乗経を用いて仏を無常なりと云わん人は、舌口中に爛るべし」云々。
 二に機とは、仏教を弘むる人は必ず機根を知るべし。舎利弗尊者は、金師に不浄観を教え浣衣の者には数息観を教うるあいだ、九十日を経て、化するところの弟子、仏法を一分も覚らずして還って邪