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また双林最後の涅槃経の第三に云わく「今、正法をもって諸王・大臣・宰相・比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷に付嘱す乃至法を護らざる者をば、禿居士と名づく」。また云わく「善男子よ。正法を護持せん者は、五戒を受けず、威儀を修せず、応に刀剣・弓箭・鉾槊を持すべし」。また云わく「五戒を受けざれども、ために正法を護るを乃ち大乗と名づく。正法を護る者は、応当に刀剣器杖を執持すべし」云々。
四十余年の内にも梵網等の戒のごとくんば、国王・大臣の諸人等も一切の刀杖・弓箭・矛斧・闘戦の具を畜うることを得ず。もしこれを畜えば、定めて現身に国王の位・比丘比丘尼の位を失い、後生は三悪道の中に堕つべしと定め了わんぬ。しかるに、今の世は道俗を択ばず、弓箭・刀杖を帯せり。梵網経の文のごとくんば、必ず三悪道に堕ちんこと疑いなきものなり。涅槃経の文無くんば、いかにしてかこれを救わん。また涅槃経の先後の文のごとくんば、弓箭・刀杖を帯して悪法の比丘を治し正法の比丘を守護せば、先世の四重五逆を滅して必ず無上道を証せんと定む。
また金光明経の第六に云わく「もし人有って、その国土において、この経有りといえども、いまだかつて流布せしめず、捨離の心を生じて聴聞せんことを楽わず、また供養・尊重・讃歎せず。四部の衆・持経の人を見て、また尊重乃至供養すること能わず。ついに、我らおよび余の眷属の無量の諸天をして、この甚深の妙法を聞くことを得ず、甘露の味に背き、正法の流れを失い、威光および勢力有ることなからしむ。悪趣を増長して人天を損減し、生死の河に墜ちて、涅槃の路に乖かん。世尊よ。我ら四王ならびに諸の眷属および薬叉等、かくのごとき事を見て、その国土を捨てて擁護の心無け
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(023)守護国家論 | 正元元年(’59) | 38歳 |