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次に畜生道と申すは、その住所に二つあり。根本は大海に住す。枝末は人天に雑われり。短き物は長き物にのまれ、小さき物は大なる物に食らわれ、互いに相食んでしばらくもやすむことなし。あるいは鳥獣と生まれ、あるいは牛馬と成っても重き物をおおせられ、西へ行かんと思えば東へやられ、東へ行かんとすれば西へやらる。山野に多くある水と草をのみ思って、余は知るところなし。
しかるに、善男子・善女人、この法華経を持ち、南無妙法蓮華経と唱え奉らば、この三罪を脱るべしと説き給えり。何事か、これにしかん。たのもしきかな、たのもしきかな。
また、五の巻に云わく「我は大乗の教えを闡いて、苦の衆生を度脱せん」と。心は、「われ大乗の教えをひらいて」と申すは、法華経を申す。「苦の衆生」とは何ぞや。地獄の衆生にもあらず、餓鬼道の衆生にもあらず、ただ女人を指して、「苦の衆生」と名づけたり。五障・三従と申して、三つしたがう事有って、五つの障りあり。竜女、「我、女人の身を受けて、女人の苦をつみしれり。しかれば、余をば知るべからず、女人を導かん」と誓えり。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
日蓮 花押
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(016)主師親御書 | 建長7年(’55) | 34歳 |