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と申すは、法華経・涅槃経を云いうとむる者と見えたり。当世の念仏者等、法華経を知り極めたる由をいうに、因縁・譬喩をもって釈し、よくよく知る由を人にしられて、しかして後には、この経のいみじき故に末代の機のおろかなる者及ばざる由をのべ、強き弓・重き鎧、かいなき人の用にたたざる由を申せば、無智の道俗さもと思って、実には叶うまじき権教に心を移して、わずかに法華経に結縁しぬるをも翻し、また人の法華経を行ずるをも随喜せざる故に、師弟ともに謗法の者となる。
これによって、謗法の衆生、国中に充満して、たまたま仏事をいとなみ法華経を供養し追善を修するにも、念仏等を行ずる謗法の邪師の僧来って、法華経は末代の機に叶い難き由を示す。故に、施主もその説を実と信じてあるあいだ、訪わるる過去の父母・夫婦・兄弟等はいよいよ地獄の苦を増し、孝子は不孝・謗法の者となり、聴聞の諸人は邪法を随喜し、悪魔の眷属となる。
日本国中の諸人は仏法を行ずるに似て仏法を行ぜず、たまたま仏法を知る智者は国の人に捨てられ、守護の善神は法味をなめざる故に威光を失い利生を止め、この国をすて他方に去り給い、悪鬼は便りを得て国中に入り替わり、大地を動かし、悪風を興し、一天を悩まし、五穀を損ず。故に、飢渇出来し、人の五根には鬼神入って精気を奪う。これを疫病と名づく。一切の諸人、善心無く、多分は悪道に堕つること、ひとえに悪知識の教えを信ずる故なり。
仁王経に云わく「諸の悪比丘は、多く名利を求め、国王・太子・王子の前において、自ら破仏法の因縁、破国の因縁を説かん。その王別えずしてこの語を信聴し、横しまに法制を作って仏戒に依らず。これを破仏・破国の因縁となす」文。文の心は、末法の諸の悪比丘、国王・大臣の御前にして、
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(001)唱法華題目抄 | 文応元年(’60)5月28日 | 39歳 |