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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(001)

唱法華題目抄

 文応元年(ʼ60)5月28日 39歳

 ある人、予に問うて云わく、世間の道俗、させる法華経の文義を弁えずとも、一部・一巻・四要品・自我偈・一句等を受持し、あるいは自らもよみかき、もしは人をしてもよみかかせ、あるいは我とよみかかざれども経に向かい奉り合掌・礼拝をなし香華を供養し、あるいは上のごとく行ずることなき人も、他の行ずるを見てわずかに随喜の心をおこし国中にこの経の弘まれることを悦ばん。これ体のわずかのことによりて、世間の罪にも引かれず、彼の功徳に引かれて、小乗の初果の聖人の度々人天に生まれてしかも悪道に堕ちざるがごとく、常に人天の生をうけ、終に法華経を心得るものと成って、十方浄土にも往生し、またこの土においても即身成仏することあるべきや。委細にこれを聞かん。
 答えて云わく、させる文義を弁えたる身にはあらざれども、法華経・涅槃経ならびに天台・妙楽の釈の心をもって推し量るに、かりそめにも法華経を信じていささかも謗を生ぜざらん人は、余の悪にひかれて悪道に堕つべしとはおぼえず。ただし、悪知識と申して、わずかに権教を知れる人智者の由をして法華経を我らが機に叶い難き由を和らげ申さんを、誠と思って、法華経を随喜せし心を打ち捨